薬草(やくそう)は、製薬原料として、あるいはそのものを食べることで薬効をもとめるのに利用される植物の総称である。草本類だけでなく木本類も含むため言葉の厳密性から薬用植物とも呼ぶ。
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薬草は外傷の手当てなどから病気の治療、体質の改善のほか、染料や香料・化粧品などにも使われている。香料に利用されるものはハーブとも呼ばれる。昔から、病気や怪我の民間治療薬として多く用いられてきた。そのような伝統は世界中、どこの民族にもあり、漢方でいう本草学は、その薬草の使用法についての知識の集大成である。また呪術医のように民間療法の延長としての擬似的な医療行為もあり、これらも生活環境の周辺に生えている草木を利用する。
ヨーロッパでも、中世よりさまざまな魔女や聖女を含む神秘主義者などや、または修道院でもこうした薬草から治療薬を精製したり、薬草を酒に漬け込んで薬として供するということが盛んに行われた。この中には酒そのものの製造も含まれ、しばしば酒税などの形で時の権力者との諍いの火種にもなったり、或いは修道院の貴重な収入源ともなっていた。こういった薬草治療法は、ヨーロッパから世界へ広まっていったものもあれば、逆に世界からヨーロッパに流入した知識もある。
こういった知識は元々は個人の経験則に沿って収集されていったものでもあるが、民間療法の常として伝承の形などで代々受け継がれていった。また上に挙げた本草学のように学術的に編纂されたものも世界各地に残されている。
ただ後に、科学の発達にも伴い、こういった不確かな情報に基づく薬草に拠る治療は薬効の調査や化学を利用した有効成分の単体分離などの形で医薬品が発達、より確実な効果が得易い医薬品の利用へと変化していった。今日では有効成分を含む植物が農業的手法で大規模に栽培され、これから抽出された成分や、あるいはより安価に化学合成された薬品が医療に用いられている。
動物がこのような効果を求めて使われる例は比較的少ない。
一般に植物は自ら動いて他の生物に食べられないよう防衛することができないため、積極的に体内に毒性のある化学物質(主にアルカロイド)を生成して蓄える形で防衛する「化学防御」を行う傾向があるが、こういった毒性物質を上手に用いることで薬理効果が得られると解されている(→有毒植物)。
しかしアルカロイド以外にも動物由来毒のペプチド(低分子量のアミノ酸分子系統群)の一種である毒性物質にも一定の薬理効果があるものもあり、薬草ほど積極的ではないにせよ、一部にはこのペプチドを利用していると考えられている民間療法も見られる。
近代以降では、薬草そのものやこれを加工した製品に拠る治療から、薬草から抽出した有効成分やこれと同じ構造を持つ化学物質などが利用されている。しかしこういった単体分離した化学物質は効果が極端であったり、所定の症状にしか効果が無かったり、或いは副作用などデメリットも大きいという問題も抱えている。これらの事情にも絡んで、近年では薬草治療が徐々に見直されるようになっている。
現代医学の分野では、世界各地に伝えられた植物を調査、その結果新たな薬品が発見された例も数多い。こと17世紀~19世紀頃に活躍したプラントハンターはヨーロッパなど先進各国に様々な植物を持ち込んだが、こういった調査活動は今日でも続けられており、様々な症状に対抗できる可能性を求め、積極的に世界の伝統的な薬草の研究を行う研究者や製薬会社もある。
しかし薬草に含まれる化学物質は往々にして複雑で、複数の成分が効果に関与していたり、或いは単独では有害ですらある成分も含まれ、それらが互いに関係しあうことも少なくないなど、解析が困難な場合も多い。その一方では、ある症状に効能があると信じられていた薬草において、分析結果から効果が否定される場合もある。実際には薬効が無くても、効いた気分になってしまう可能性などの、いわゆるプラセボ効果であったり、或いは生理作用が検証できなかったりといった問題も含まれる。
薬品原料としては様々な植物がある。例えば中華料理では香辛料として用いられる八角にはシキミ酸が含まれるが、これを原料に化学反応を行いインフルエンザ治療薬のオセルタミビル(商品名「タミフル」)が合成される。ただ八角を幾ら食べてもインフルエンザには効かない。またシキミ酸は八角から抽出されるものの植物由来であることから安定供給の面で難があり、2006年には石油から合成されたリン酸オセルタミビルより化学反応を経てオセルタミビルを合成する手法が開発され、同薬の安定供給に期待がもたれている。
現代の医療では治療が困難、あるいは不可能な病気や症状と言うものも少なからず存在するが、最後の頼みの綱として薬草が求められる場合もある。こういったものは実際に効果があるのか、或いは不安を取り除く一種の暗示的なものなのか(→フードファディズム)といった、社会現象的な側面からも注意を要する健康ブームも見られる。
この中では、「末期ガンに効く」薬草やキノコのようなものも一般に出回っており、この他にも各種慢性疾患や生活習慣病などの治療効果などが囁かれる薬草も少なくない。先述のように、薬草には分析や評価が困難な成分があるなど、科学的には理解できなくても効果そのものはある可能性がある、ないし在るであろうと予測できるためであり、バイブル商法を含めると効果が上がったという話は枚挙にいとまがない。そこから新たな薬品開発を模索する研究も行われることがある。
ただし、実際には上がった効果の原因として、プラセボ効果である場合や、他の並行して行われた治療に拠る効果、或いは個人的な体質の問題も考慮しなければならない。往々にして不確かな健康食品の類ではその辺りの検証が後回しになっているケースすらあり、これに拠る健康被害といった問題すら見られる。この危うさにつけ込んだ悪徳商法も時折出現する。なお日本では、医学的な証明ができないまま薬効を宣伝して商品を販売すると薬事法違反となるが、悪徳商法の常として、それら法制度の穴を探るような業態が見られないわけではない。
南米アンデスでは呪術師が薬草を使い、医師の役割も果たしてきた(→呪術医)。ボリビアのカリャワヤが有名で、彼らの持つ世界観は2003年に「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」(世界無形遺産候補)に選ばれている。
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